台ヶ岳はススキ草原と森に覆われた山、大きく悠然と構える仙石原のシンボル!
台ヶ岳(だいがたけ)は箱根のやや北西部に位置します。仙石原をぐるりとごらんください。大涌谷の噴煙が湧きたつ手前側、どっしりと大きく構えた山が台ヶ岳です。
この記事の目次
【緑に覆われ圧倒的な存在感】
台ヶ岳は噴煙上げる大涌谷の北にあります。名前のとおり台形状をしており、全体を森林で覆われた山容。大きなその姿は仙石原のどこからも一目でわかるでしょう。
他の山が濃霧に隠れていても、台ヶ岳だけは見えていることがよくあります。それだけ仙石原には馴染み深い山なのです。
金時山や大涌谷、さらには宮城野方面・芦ノ湖方面などからも、その大きな山容を間近に望むことができます。
金時山から望む台ヶ岳とススキ草原、左上は大涌谷(2022年5月5日撮影)
【火山の中心を成す溶岩ドーム】
約40万年前から大規模な火山活動を続けてきた箱根。長い長い火山の歴史とエネルギーは、外側を取り巻く古期外輪山、その中に隆起する新期外輪山、真ん中に高い中央火口丘という三重式カルデラを作り上げました。
このうち神山の基礎となる中央火口丘は、約5万年前に誕生したと考えられています。
中央火口丘はその後も激しい火山活動を繰り返し、駒ヶ岳や二子山などの「溶岩ドーム」を発生させました。台ヶ岳はこの溶岩ドームに属しており、約4万年前~1万年前、隣接する小塚山とほぼ同時期にできあがったとされています。
長尾峠付近から望む台ヶ岳と小塚山(左)、右上に大涌谷と冠ヶ岳(2022年7月6日撮影)
【山腹には超有名なススキ草原】
台ヶ岳といえば中腹に広がるススキ草原が有名でしょう。毎年10月~11月になると一面のススキが、秋風に穂波を輝かせます。
しかも青空に周囲の山々の紅葉、そして黄金色の穂波という「秋の三重奏」。これを演出してくれるのも台ヶ岳なのです。
毎年3月には植生を保護するため、大規模な野焼きが行われます。仙石原に春の訪れを告げる風物詩。紅蓮の炎が焼き尽くす光景は、圧巻そのものでしょう。野焼きが終わればススキ草原は真っ黒こげ。
しかし新たな命が確かに芽生え、鮮やかな緑色に輝き、秋の黄金色を迎え、冬には一面の雪化粧と、台ヶ岳が自然の営みを休みなく進めているのです。
ススキ草原へは神奈川県道75号「仙石高原バス停」から徒歩間もなく。または箱根湿生花園や付近の臨時駐車場から、徒歩約10分でアクセスできます。山腹には歩道が付けられており、ススキ草原の上部まで行ってみるのもいいでしょう。
【台ヶ岳、四季の移ろい】
仙石原には四季の変化、気象の変化を知らせてくれる山があります。金時山に長尾山に丸岳に冠ヶ岳・・・でもいちばん近くで物語ってくれる山こそ台ヶ岳でしょう。
2022年10月まで仙石原に住んでいた私、家の窓からはいつも台ヶ岳が真正面に望めました。日常生活の一部だった山、そう表現しても過言ではありません。
噴煙を上げる大涌谷と鋭く尖った冠ヶ岳、そして火山の鼓動・・・厳しく激しい自然環境を、台ヶ岳は四季さまざまな姿で、力強く大らかに演出しています。
【台ヶ岳に登りたい…しかし】
台ヶ岳はススキ草原が有名ですが、山の大部分は深い森林が覆っています。とりわけ頂上付近の大規模なブナ原生林は、箱根でも数少ない貴重な自然環境。そのため登山道は整備されていません。
仙石原からすぐ目の前に望めるため、いかにも登れそうな山に思えるでしょう。でも北側(ススキ草原側)は急峻な斜面が多いうえ、人を寄せ付けないような森林。
実は2006年3月に、大涌谷側から台ヶ岳へ入ったことがあります。しかし深い森林に加え、背の高いハコネダケで道を見失いました。切り立った崖も隠されており、入山は非常に危険な状況です。
箱根ロープウェイから望む台ヶ岳、右に金時山(2019年3月25日撮影)
【あの時、安心感を与えてくれた】
2015年、大涌谷の火山活動活発化により箱根は一時「噴火警戒レベル3」となりました。ここ仙石原にも不安と緊張が走ったことを、今でもはっきりと思い出します。
もしかしたら大きな噴火がおきるのか、そんな恐怖感さえ流れました。
しかしそんな時「大丈夫だよ、心配するな」と、台ヶ岳が語りかけてくれたように思います。台ヶ岳はいつも仙石原を、大らかに見守っています。
【台ヶ岳の基本情報】
●標高1,045m
●中央火口丘(溶岩ドーム)
●富士箱根伊豆国立公園
●神奈川県足柄下郡箱根町
●北麓のススキ草原はかながわの景勝50選
●神奈川県道75号すぐ近く
●登山道不明