明星ヶ岳は箱根の北東に大きく、人々が流した汗と炎と鎮魂の山

明星ヶ岳(みょうじょうがたけ)は箱根の北東にある山。急峻な斜面には年に一度の行事にかけた、人々の汗がしみ込んでいます。さあ、仙石原から明星ヶ岳へ登りに行きましょう。

早雲山駅前から望む明星ヶ岳(2024年2月8日撮影)

【外輪山が続くその向こうに】

明星ヶ岳は箱根の北東に位置し、箱根町と小田原市の2つにまたがります。

仙石原の空を見ると向かって左から、丸岳乙女峠長尾山金時山矢倉沢峠…場所を移せば明神ヶ岳まで、外輪山の山並みが続いているでしょう。

明星ヶ岳はこの向こうにあるため、仙石原からは望むことができません。しかし丸岳や金時山・乙女峠へ登れば、山並みの右端に姿がはっきりと見えてきます。

また箱根ロープウェイの大涌谷~早雲山間や、強羅温泉駒ヶ岳からは真正面に。山麓の宮城野からは頭上に、その大きな山容を望めます。

乙女峠から望む明星ヶ岳と仙石原(2014年5月9日撮影)

箱根ロープウェイから望む明星ヶ岳(2022年12月20日撮影)

【山の上には星が光り輝く?】

約40万年前から大規模な火山活動を続けてきた箱根。外側を取り巻く古期外輪山、その中に隆起する新期外輪山、真ん中に高い中央火口丘という三重式カルデラを作り上げました。

明星ヶ岳は丸岳や金時山・明神ヶ岳などと同じ、古期外輪山に属しています。

標高は924mですが傾斜は急で、想像以上にきつい登山道。夜に山麓から望めば、山の上に「宵の明星(よいのみょうじょう)…金星」が輝くことが、名称の由来とされています。

駒ヶ岳から望む明星ヶ岳(2020年1月9日撮影)

宝永山から箱根外輪山の山々、右奥に明星ヶ岳(2009年10月13日撮影)

【100年の歴史を誇る大文字焼】

明星ヶ岳を眺めると、頂上直下の山肌に「大」の文字が確認できるでしょう。これこそが明星ヶ岳のシンボルこの場所では毎年8月16日に、箱根の代表的な行事大文字焼が実施されるのです。

1921(大正10)年に始まってから100年。当初は避暑で箱根を訪れた人々向けに行われていました。

しかし2年後におきた関東大震災の犠牲者を弔うために実施され、以降は亡くなった方の魂が帰って来るお盆が終わり、再び魂を天へ返す「送り火」としての意味も濃くなっています。

同日に京都で行われる 五山の送り火と共に、夏の夜空を照らしつつ静かに魂を見送るのです。

大文字の場所にある説明看板(2022年3月12日撮影)

【若き人々の汗と情熱と炎】

今では「箱根強羅夏まつり 大文字焼」として行われますが、準備には大変な労力と時間がかかります。

これを進めるのが箱根強羅観光協会と、地元企業に勤める若手スタッフ、そして宮城野青年会のみなさんの約80名。

本番の2ヶ月前、既に暑さが厳しくなりはじめた頃から、準備が始まります。大文字焼に使用されるのは、箱根一帯に自生する「箱根篠竹(はこねしのだけ)」

これを山に入って刈り取り、大文字の場所まで運び上げ、乾燥させる作業を何度も繰り返します。そして直径約30cmにまとめた束を250個作り、「大」の形に合わせ配置するのです。

準備が進む大文字(2018年8月2日、箱根彫刻の森美術館から撮影)

大文字は急斜面の場所(2018年4月28日撮影)
 

本番当日の8月16日は数時間前から登り、天候を気にかけながら19時30分、花火を合図に一斉に点火。夏の夜空に鮮やかな大の文字が浮かび上がるでしょう。

箱根全山を轟かせるような花火が、豪快に華やかに盛り上げます。大文字のすぐそばでは若いみなさんが、熱風に吹かれながら場を取り仕切るのです。

ただでさえ急斜面の続く明星ヶ岳です、山麓から往復するだけでも大変な重労働。それでも年に一度の大行事を進めるみなさんには、ただ敬服の想いしかありません。

明星ヶ岳には魂を送る人々の汗と情熱が、確かにしみ込んでいるのです。

強羅温泉から望む明星ヶ岳(2023年8月16日撮影)

第102回箱根強羅温泉大文字焼(2023年8月16日撮影)

【大文字からの眺めは最高!!】

毎年熱く炎が燃えさかる大文字も、普段は静かな登山道の一角。貴重な休憩ポイントであると同時に、素晴らしい眺望が楽しめる場所です。

北西には外輪山の向こうにそびえる富士山、南西には箱根最高峰・神山をはじめとする中央火口丘、そして眼下には宮城野に強羅の温泉街…疲れが一気に吹き飛んでしまうでしょう。

富士山と右端に金時山(2022年3月12日撮影)

左から二子山、駒ヶ岳、神山(2018年4月28日撮影)

眼下に宮城野と左上に強羅の街(2018年4月28日撮影)

【主な登山コースを紹介!!】

明星ヶ岳は仙石原から距離があるため、移動手段など相応分の時間・体力を要します。
●2023年12月11日現在、仙石案内所前バス停の時刻表

(1)宮城野橋~大文字 経由コース

仙石原から箱根登山バスの「湯本駅・小田原駅行き」に乗車し、約11分の「宮城野橋」で降車します。

標識に従って坂道に入り、分岐を右へ進んで箱根老人ホームさんの前を通過後、さらに坂道を上って登山口。ここから急な斜面を登り、大文字から再び登れば分岐。尾根を右へ進むと明星ヶ岳頂上です。

【所要時間・・・片道 約1時間20分】
●宮城野橋バス停(10分)箱根老人ホームさん前(10分)登山口(45分)大文字(10分)分岐(2分)明星ヶ岳頂上

宮城野橋前の標識(2022年3月12日撮影)                 登山口への坂道(2022年3月12日撮影)
 

大文字への急登(2018年4月28日撮影)

帰りは往路を戻るか、時間と体力に余裕があれば明神ヶ岳へ縦走しましょう。途中の鞍部から頂上を往復(片道約45分)し、宮城野へ下ってもOK。

【所要時間・・・明星ヶ岳~鞍部~明神ヶ岳~鞍部~宮城野営業所前バス停まで、約3時間10分。各バス停からは箱根登山バス「湖尻桃源台行き」に乗車し、仙石原方面へ帰ります】

●2023年12月11日現在、宮城野橋バス停の時刻表
●2023年12月11日現在、宮城野案内所前バス停の時刻表

明神ヶ岳への尾根道(2022年3月12日撮影)                明神ヶ岳から望む明星ヶ岳(2021年4月21日撮影)
 

明神ヶ岳からさらに西へ縦走し、矢倉沢峠から仙石原へ下るのもおすすめです。
【所要時間・・・明星ヶ岳~明神ヶ岳~矢倉沢峠~仙石原交差点まで、約4時間10分】

反対に東南側の塔ノ峰(とうのみね・標高566m)へ縦走し、箱根湯本方面へ下るのもいいでしょう。
【所要時間・・・明星ヶ岳~塔ノ峰~阿弥陀寺~箱根湯本駅前まで、約3時間00分】

●2023年12月11日現在、箱根湯本駅バス停の時刻表

御嶽大神をお祀りする明星ヶ岳頂上(2018年4月28日撮影)

(2)宮城野橋以外の登山コース

●小田原駅から伊豆箱根バスに乗車し、約25分の「和留沢入口」で降車。ここから「奥和留沢みはらしコース」を登り、約3時間00分で明星ヶ岳頂上です。

小田原市酒匂川から箱根連山、右端が明星ヶ岳(2021年12月15日撮影)

【初心に帰る山・明星ヶ岳】

個人的な話で大変恐縮ですが、私は1996(平成8)年3月に箱根町へ来ました。住んでいた場所は宮城野、明星ヶ岳の山麓です。そして一番最初に覚えた山の名も明星ヶ岳でした。

あれから四半世紀の時が過ぎ、仙石原そして御殿場に居を移した今では、宮城野での日々も明星ヶ岳も大文字焼も、懐かしい想い出となりつつあります。

しかし今も小田原方面へ出かける途中、通過するのはかつて住んでいた宮城野。明星ヶ岳を仰ぎ見るたび、あの3月の初心を呼び覚まします。

宮城野から望む明星ヶ岳(2018年4月2日撮影)
 

【明星ヶ岳の基本情報】

●標高 924m
●古期外輪山
富士箱根伊豆国立公園
●神奈川県足柄下郡箱根町、神奈川県小田原市、
●北西には明神ヶ岳
●毎年8月16日に大文字焼が行われる
(別名・大文字山)
クマ出没について(新)

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