早雲山は生々しく凄まじき爆裂火口、忘れてはならない記憶を物語る!

早雲山(そううんざん)は箱根の中心に、火山活動を生々しく表現する山。そして過去の歴史を物語る山です。さあ、仙石原から早雲山を見に行きましょう。

宮城野から望む早雲山(2021年4月21日撮影)

【山腹は箱根交通網の重要拠点】

早雲山は箱根のほぼ中央部にあります。山腹には「早雲山駅」があり、西には大涌谷~桃源台方面への箱根ロープウェイが、東には強羅方面への箱根登山ケーブルカーが延びており、人々が行き交う箱根交通網の重要基点と言えるでしょう。

早雲山駅(2023年1月31日撮影)

【今も噴煙上げる凄まじい早雲地獄】

個性的な山が多い箱根の中にあって、早雲山は唯一「凄絶」という表現ができるかもしれません。今なお噴煙上げる巨大な爆裂火口に、その想いをより強くさせられます。

西峰と東峰に分かれていると見られ、西峰の標高が1,244m・東峰の標高が1,151m。この両峰の奥には箱根最高峰・神山が控えており、前衛峰の役割を担っているかのようです。

宮城野諏訪神社から望む早雲山(2022年12月26日撮影)

約40万年前から大規模な火山活動を続けてきた箱根、長い箱根火山の活動は、外側を取り巻く古期外輪山、その中に隆起する新期外輪山、真ん中に高い中央火口丘という三重式カルデラを作り上げました。

このうち中央火口丘は、約5万年前に誕生したと考えられており、箱根最高峰・神山の基盤となってさらに激しい火山活動を繰り返しつつ、駒ヶ岳二子山台ヶ岳小塚山など、いくつもの溶岩ドーム」を誕生させます。

早雲山もこの溶岩ドームの一つとされているのです。

上強羅付近から望む早雲山(2021年5月14日撮影)

そして約3,100年前、神山でおきた水蒸気爆発が、北西~北東方向に大規模な爆裂火口を発生させました。この北西側にできた爆裂火口が大涌谷、北東にできた爆裂火口が「早雲地獄」と呼ばれ、今もなお噴煙を上げているのです。

現在箱根では大涌谷と駒ヶ岳の湯の花沢、そしてここ早雲地獄の3ヶ所で火山活動が続いています。

【なかなか見ることが難しい山】

早雲山は強烈なインパクトを持つ山ですが、仙石原からは望むことができません。しかも見える場所が限られているため、その姿を望むには意外に手間がかかります。

まず冒頭で紹介した早雲山駅前付近、ここからは早雲地獄の爆裂火口を間近に望めます。

早雲山駅前から望む早雲地獄(2015年5月22日撮影)

全体を望むならば、仙石原からバスで約10分の宮城野でしょう。ただ国道沿いからは見えないため、明神ヶ岳登山道途中の高台か、宮城野諏訪神社まで足を運ぶ必要があります。

明神ヶ岳明星ヶ岳に登れば、箱根最高峰の神山や駒ヶ岳の手前に、迫力ある様相が見られるでしょう。早雲山は箱根火山を物語る山でありながら、その姿を望める場所は少ないのです。

宮城野から望む早雲山(2022年12月26日撮影)

明神ヶ岳から望む早雲山、左に駒ヶ岳(2022年12月26日撮影)

【忘れてはならない大規模災害】

1953(昭和28)年7月26日、早雲地獄の「須沢」にて大規模な地すべりが発生します。大量の土砂は現在の「箱根彫刻の森」付近まで流下し、13名の犠牲者と15名の負傷者を出す大災害となりました。
大涌谷や早雲山は火山ガスで岩石が粘土化し、地すべりがおきやすくなっているのです。

早雲山駅から徒歩約15分の場所に建つ大雄山最乗寺箱根別院には、観音像と共に、犠牲となった方々への慰霊碑が、ひっそりと連ねられています。

犠牲者を弔う観音像と慰霊碑(2023年1月31日撮影)
 

そして早雲山上部から爆裂火口のエリアでは、現在も大掛かりな砂防工事と地すべり防止工事が日々行われているのです。災害から今年で70年、悲劇を繰り返さないために・・・。

明星ヶ岳大文字から工事現場を遠望(2023年5月27日撮影)

【火山をまともに感じた登山道】

大涌谷の火山活動により2015年5月以降、神山と駒ヶ岳は登山禁止となっています。早雲山駅前からは急峻な登山道を約2時間余りで神山へ、3時間余りで駒ヶ岳へ至ることができたうえ、大涌谷へも到達することができました。

ベニバナヒメイワカガミやコアジサイなどの花も楽しめましたが、高濃度の火山ガスが発生しており立入不可。箱根火山を肌で感じられた、箱根の代表的な長く険しい登山道です。

登山道にある巨岩(2010年6月1日撮影)                 ベニバナヒメイワカガミ(2014年5月25日撮影)
 

【天狗さまが迎える山奥のお寺】

過去の凄惨な自然災害、そして近年の火山活動と、早雲山は箱根の自然の厳しさを具現化してきた山。その山腹に静粛なたたずまいを見せる場所が、前述の大雄山最乗寺箱根別院です。
早雲山駅から坂道を上ること約15分、いかめしい風貌の天狗さまが迎えてくれるでしょう。

和尚様がお寺を建てると聞いた弟子・道了尊(どうりょうそん)が、はるばる近江の国から天狗の姿となって駆け付け、その神通力で山や谷を拓き、お寺の建設に尽力します。そして和尚様が亡くなった後に、山中深くへ飛び去ったと伝えられ、以来お寺の守護神とされているのです。

現在はひっそりとしていますが、早雲山駅に来たらぜひ足を運んでみたいお寺です。

天狗さま(2021年5月14日撮影)

大雄山最乗寺箱根別院(2022年12月20日撮影)

【よみがえりつつある箱根早雲山】

そしてこの程、早雲山駅がリニューアルされ、爽快な展望テラスがオープンしました。ここ数年の火山活動や新型ウイルス禍の影響で、訪れる人も少なかった早雲山。

しかし今、西に続く大涌谷~桃源台方面への箱根ロープウェイと、東に続く強羅方面への箱根登山ケーブルカーという重要交通拠点として、再び活気を取り戻してきました。

新しくなった早雲山駅(2022年12月20日撮影)

そして早雲山駅へ来たならば、ぜひ早雲山を仰ぎ見てください。早雲山はその壮絶な姿で、箱根の自然の美しさと厳しさ、そして栄枯盛衰を見守ってきた山なのです。

早雲山駅前から望む早雲地獄(2024年2月8日撮影)

【早雲山の基本情報】

●標高1,244m
●中央火口丘(溶岩ドーム)
●箱根で4番目に高い山
富士箱根伊豆国立公園
●神奈川県足柄下郡箱根町
●巨大な爆裂火口を持つ
●山腹には早雲山駅
(箱根ロープウェイと箱根登山ケーブルカーの中継点)
現在入山禁止

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