タニギキョウは新緑に清くつつましく、ふと気づけばあちこちに咲いている花!

タニギキョウは白くて可憐な花。春の太陽が大らかに歌い、サクラやスミレたちが色とりどりに輝く中、ひっそりと静かに、されど凛々しく咲き誇ります。

(2020年5月5日、仙石原にて撮影)

【気づけばあっちにもこっちにも】

咲き誇っていたサクラが終わりを迎えると、季節は春から初夏へ移ろいます。萌えるような若葉が箱根全山に広がり、自然がますます活気に満ちてくるでしょう。

森林浴をしながら歩いていると、小さな白い花が咲いていませんか。それがタニギキョウです。

(2021年5月8日、愛鷹連峰黒岳にて撮影)

本当に小さくて愛らしい花ですが、ふと見渡してみると・・・あっちにもこっちにもそっちにも、いっぱい咲いていることに気付きます。

あたかも白い星のように新緑の森に咲き広がる光景は、つつましくも圧巻と言えるでしょう。

(2019年5月3日、仙石原にて撮影)

【新緑の中に広がる小さなスター】

タニギキョウは日本全国各地に分布しており、山間の森林の木陰など、湿り気の多い場所に群生します。開花期は4月中旬~5月中旬ですが、地方によっては6月に開花することも。

ここ箱根でも多くの場所に群落を作っており、仙石原では箱根湿生花園周辺や仙石原自然探勝歩道、そして金時山長尾山にかけて出会えます。

(2015年4月30日、仙石原自然探勝歩道にて撮影)

細かく枝分かれした地下茎から派生し、いくつもの地上茎が群れを作ります。その先端部に約5mm~8mmほどの小さな白い花が、いっせいに咲き始めるのです。

5つに分かれたその姿は、白星がいっぱい群れているかのような光景。ミヤマハコベなどといっしょに咲いていることもあり、春から初夏はこの2つの競演が見られます。

葉も約15mm内外の円形で互生し、深い緑色で白い花々をうまく演出しています。

タニギキョウの葉と花(2022年5月5日、金時山にて撮影)

【自身を反省させられた箱根の一日】

私がタニギキョウという花をはじめて知ったのは、2010(平成22)年5月のことでした。

新緑と風爽やかな土曜日。近所のみなさんといっしょに箱根関所を訪れたのですが、芦ノ湖に続く歩道沿いに、いっぱい咲く小さな白い花・・・。

「これ何の花?」ときかれても答えられず、帰宅後に調べてタニギキョウとわかったのです。

当時、箱根に住みはじめて14年でしたが、こんな愛らしくつつましやかな花があるのか・・・と、自らを省みると共に、新たな発見として心に刻みました。

(2018年4月29日、仙石原自然探勝歩道にて撮影)

【小さくも気品に満ちて凛々しく】

春から初夏の仙石原はサクラやスミレの花々、色鮮やかな新緑の野山が目に映えます。しかしすぐ足元に目を移せば・・・そこにタニギキョウはあるでしょう。

花言葉の「気品」が示すように、タニギキョウはふと見ると、あっちにもこっちにもそっちにも咲いている・・・小さくも美しく凛とした花々なのです。

(2018年5月1日、金時山にて撮影)

【タニギキョウの基本情報】

●和名…タニギキョウ(谷桔梗)
●学名…Peracarpa carnosa var.circaeoides
●英名…なし
●キキョウ科タニギキョウ属
●多年草
●開花期…4月中旬~5月中旬
(花弁の長さは約5mm~8mm)
●葉…長さ約6mm~20mmの円形
●茎の高さは約10cm
●林縁部の木陰や湿り気の多い環境を好む
●花言葉…「気品」「変わらぬ愛」

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