タニギキョウは新緑に清くつつましく、ふと気づけばあちこちに咲いている花!
タニギキョウは白くて可憐な花。春の太陽が大らかに歌い、サクラやスミレたちが色とりどりに輝く中、ひっそりと静かに、されど凛々しく咲き誇ります。
【気づけばあっちにもこっちにも】
咲き誇っていたサクラが終わりを迎えると、季節は春から初夏へ移ろいます。萌えるような若葉が箱根全山に広がり、自然がますます活気に満ちてくるでしょう。
森林浴をしながら歩いていると、小さな白い花が咲いていませんか。それがタニギキョウです。
本当に小さくて愛らしい花ですが、ふと見渡してみると・・・あっちにもこっちにもそっちにも、いっぱい咲いていることに気付きます。
あたかも白い星のように新緑の森に咲き広がる光景は、つつましくも圧巻と言えるでしょう。
【新緑の中に広がる小さなスター】
タニギキョウは日本全国各地に分布しており、山間の森林の木陰など、湿り気の多い場所に群生します。開花期は4月中旬~5月中旬ですが、地方によっては6月に開花することも。
ここ箱根でも多くの場所に群落を作っており、仙石原では箱根湿生花園周辺や仙石原自然探勝歩道、そして金時山~長尾山にかけて出会えます。
細かく枝分かれした地下茎から派生し、いくつもの地上茎が群れを作ります。その先端部に約5mm~8mmほどの小さな白い花が、いっせいに咲き始めるのです。
5つに分かれたその姿は、白星がいっぱい群れているかのような光景。ミヤマハコベなどといっしょに咲いていることもあり、春から初夏はこの2つの競演が見られます。
葉も約15mm内外の円形で互生し、深い緑色で白い花々をうまく演出しています。
【自身を反省させられた箱根の一日】
私がタニギキョウという花をはじめて知ったのは、2010(平成22)年5月のことでした。
新緑と風爽やかな土曜日。近所のみなさんといっしょに箱根関所を訪れたのですが、芦ノ湖畔に続く歩道沿いに、いっぱい咲く小さな白い花・・・。
「これ何の花?」ときかれても答えられず、帰宅後に調べてタニギキョウとわかったのです。
当時、箱根に住みはじめて14年でしたが、こんな愛らしくつつましやかな花があるのか・・・と、自らを省みると共に、新たな発見として心に刻みました。
【小さくも気品に満ちて凛々しく】
春から初夏の仙石原はサクラやスミレの花々、色鮮やかな新緑の野山が目に映えます。しかしすぐ足元に目を移せば・・・そこにタニギキョウはあるでしょう。
花言葉の「気品」が示すように、タニギキョウはふと見ると、あっちにもこっちにもそっちにも咲いている・・・小さくも美しく凛とした花々なのです。
【タニギキョウの基本情報】
●和名…タニギキョウ(谷桔梗)
●学名…Peracarpa carnosa var.circaeoides
●英名…なし
●キキョウ科タニギキョウ属
●多年草
●開花期…4月中旬~5月中旬
(花弁の長さは約5mm~8mm)
●葉…長さ約6mm~20mmの円形
●茎の高さは約10cm
●林縁部の木陰や湿り気の多い環境を好む
●花言葉…「気品」「変わらぬ愛」