ニョイスミレは小さく粒のような花々、純白と紫色がチャームポイント!
ニョイスミレは、あたかもみんなで合唱しているかのような花。新緑の林や歩道脇をごらんください。あちこちにいっぱいいっぱい咲いています。
【タチツボスミレに負けずたくさん】
春の仙石原はさまざまなスミレが咲き競います。タチツボスミレにオトメスミレにエイザンスミレ等々。その中に、白い粒々のような花々が見られるでしょうか。
これこそニョイスミレ。箱根や仙石原ではタチツボスミレ同様に、多く見られるスミレ類の花です。
【小さいながらも人目を引きつける】
ニョイスミレは北海道から九州そして屋久島まで、ほぼ日本全国に分布しています。開花期は4月中旬から5月中旬。日本のスミレ類では最も小さな、直径1cmほどの花をいっぱい咲かせます。
そして純白の花弁の基部には、紫色の縞模様があるでしょう。この純白と紫色の絶妙なバランスこそ、ニョイスミレが人目を引きつける魅力です。花の後ろの距(きょ)は約2~3mmの球形です。
茎の高さは約25cmにも成長し、葉は長さ約2cm~3.5cmの丸っこくてきれいなハート型。タチツボスミレのようには目立ちませんが、葉の縁には小さな鋸歯が刻まれています。
箱根では少し明るい林縁部や草地に見られ、仙石原では仙石原自然探勝歩道や、長尾峠~丸岳登山道などでよく出会えるでしょう。日本でもタチツボスミレに次いで多いスミレと言われています。
【ニョイスミレか、ツボスミレか】
ニョイスミレは「ツボスミレ」と呼ばれることもあります。ツボ(坪)とは「庭」の意味ですが、かの牧野富太郎博士が、他のタチツボスミレ等と紛らわしくなってしまうと考えたのか、この「ニョイスミレ」という名称を付けたのです。
ニョイとは、僧侶が読経の時などに使う「如意(にょい)」という仏具のことで、その形を連想させたのでしょう。如意には「意のまま、思うまま」という意味もあります。
背中がかゆい時に使う「孫の手」が形も同様で、「意のまま、思うまま、かゆい所に手が届く」と、同じような意味合いがあるのです。如意、孫の手、ニョイスミレ・・・確かに似ています。
ただ植物図鑑などでは「ツボスミレ」と表記されているものも多く、特に厳密な区別やルールはないとされています。・・・ちなみにこれまた名前のよく似た「ニオイスミレ」もあるだけに、スミレ類は本当に難しいですね。
【静かに謙虚に、しかし誠実な花】
16年間住み慣れたここ箱根町仙石原から、2022年10月に御殿場へ生活拠点を移し、早くも半年になります。実は先日2023年5月2日、久しぶりに丸岳へ登ってきました。
そして最初に見られた花こそ、ニョイスミレだったのです。スミレの花々は咲き終わりを迎えていましたが、ニョイスミレだけは純白と紫色の小さな花を付けていました。
ここ数年の新型ウイルス禍で私たちは、命とは何なのかを考えさせられました。ニョイスミレは花言葉が示すとおり、静かに慎ましく人々を偲びつつ、穢れない誠実さを合唱するような花なのです。
【ニョイスミレの基本情報】
●和名…ニョイスミレ(如意菫)
(別名…ツボスミレ・坪菫)
●学名…Viola verecunda A.Gray
●英名…Japanese violet
●スミレ科スミレ属
●多年草
●開花期…4月中旬~5月中旬
(純白の五弁花、その中央に紫色の模様)
●葉…長さ約2cm~3.5cmのハート形
●茎の高さは約5cm~25cm
●花言葉…「誠実」「謙遜」「亡き人を想って」