ギンリョウソウは白銀色の竜か霊か、初夏の薄暗い森林を怪しげに照らす!

ギンリョウソウはしっとりと湿った森に、突如として現れます。その姿は美しいでしょうか、不気味でしょうか、あるいはユニークでしょうか・・・。

(2023年5月9日、愛鷹連峰黒岳にて撮影)

【だんだんと蒸し暑くなる箱根に】

爽やかな五月の風が、やがて梅雨を想わせる風に移ろう六月、新緑はますます色濃い深緑へと変わります。湿り気を帯びた森の中をふと見れば、何か白いものが生えているでしょう。

これこそ植物にも見えればキノコにも見える、少し奇妙で怪し気なギンリョウソウ。昼間も薄暗い森林の中にぼうっと光を放つかのような、本当に不思議な植物です。

(2010年5月31日、姥子温泉付近にて撮影)

ギンリョウソウは日本全国の他、シベリアや朝鮮半島に東南アジア、さらにはヒマラヤ山脈まで広く分布しています。湿度の高い森林内に多く、ここ箱根でも仙石原をはじめ金時山などさまざまな場所で見られる他、富士山周辺の森林愛鷹連峰も姿を現します。

開花期は5月~8月頃で、地下から茎をほっそりと伸ばし、高さ約10cm以上にまで成長するでしょう。そして枝分かれすることなく先端に一輪を付け、ややうつむき加減に咲いてきます。

目玉のような雌しべを黄色い雄しべが囲み、茎の横にはちょこんと小さな葉が付いています。

(2010年6月1日、姥子温泉付近にて撮影)

【葉緑素がない、光合成をしない】

植物は葉緑素をもち、光合成を行うことで緑色の葉を付けますが、ギンリョウソウはこれを行いません。樹木に生えるキノコなどに寄生しながら、樹木との間に外菌根(がいきんこん)というパイプラインを作ります。

そしてキノコなどの菌糸を根に取り入れつつ、自身が作ったパイプラインから、樹木が光合成により作り出した栄養を得て育つという腐生植物なのです。

花が終わった状態(2021年6月2日、愛鷹連峰黒岳にて撮影)

「葉緑素がなく、光合成をしない」ため透き通った白銀の姿。銀色の竜を想わせることからギンリョウソウの名ですが、あたかもこの世のものではない姿から「ユウレイダケ」とも呼ばれます。

しかしキノコではなく、れっきとした植物なのです。

【いろいろな姿に見える名役者】

ギンリョウソウは薄暗い森で、さまざまな姿を連想させてくれます。
(写真は2010年~2022年)

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【ゴキブリに食べられて育つ!?】

姿も生活もユニークなギンリョウソウ。実は近年の研究により「ギンリョウソウとゴキブリの深い関係」がわかってきました。ゴキブリと言っても家に現れる嫌われ者のゴキブリではなく、自然の中にすむモリチャバネゴキブリ

モリチャバネゴキブリは森林の中に生息しますが、何とギンリョウソウを食べているのです。そして彼らがあちこちで「落とし物」をすることで、消化されていなかった種子が森林の中にばらまかれ、その結果、ギンリョウソウがあちこちに育つというのです。

アリとギンリョウソウ(2021年7月6日、富士山にて撮影)

ギンリョウソウもモリチャバネゴキブリも同じような環境で育ちます。湿気が多く薄暗い森の中なら、外敵に襲われることがないでしょう。ギンリョウソウはこんな不思議な側面も持っているのです。
(詳しくはこちら

【薄暗い森林でそっと見守る花】

葉緑素を持たない白銀色をした、不思議なギンリョウソウ。ここ箱根町仙石原は湿度が高く、薄暗い森林が数多くあります。ギンリョウソウにはいちばん住みやすい環境なのでしょう。

白銀の竜を想わせる美しさ、幽霊を想わせる不気味さ、目玉を想わせる面白さ、そしてゴキブリとの意外な関係・・・。ギンリョウソウは実にユニークな植物ですね。

六月の仙石原はサンショウバラヤマボウシが輝きますが、ギンリョウソウも輝いています。花言葉が示すようにギンリョウソウは、初夏をそっと見守る美しき花なのです。

(2015年5月11日、金時山にて撮影)

【ギンリョウソウの基本情報】

●和名…ギンリョウソウ(銀竜草)
(別名…ユウレイダケ・幽霊茸)
(別名…スイショウラン・水晶蘭)
●学名…Monotropastrum humile
●英名…Indian pipe / Wax flower
●ツツジ科ギンリョウソウ属
(旧・イチヤクソウ科、シャクジョウソウ科)
●多年草(腐生植物)
●開花期…5月中旬~8月上旬
(白銀色の姿に紫色の雌しべ、周囲に黄色の雄しべ)
●葉…長さ約2cmの白銀色
●茎の高さは約5cm~15cm
●花言葉…「はにかみ」「そっと見守る」

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