カケスは声こそ濁れども美しき鳥、仙石原の森に響く「ジェーッ」!♫
カケスは箱根の山や仙石原の森を歩いていると、きっと出会えるでしょう。白い模様と青い模様をひるがえしつつ、「ジェーッ!!」と大きな声で現れます。
この記事の目次
【大きなしわがれ声と美しき青色】
箱根の山々をゆっくり歩けば、日々の喧騒を忘れ、さまざまな自然を感じられます。やや薄暗い森にさしかかると突如、何か濁った大きな声がきこえてくるでしょう。
「ジェーッ!! ジェーッ!!」・・・森の静寂を切り裂くかのような、少しびっくりするような声の主こそカケス。でも、ぱっとひるがえる青い羽模様に、さっきの濁声も忘れてしまいます。
【鳴き声がそのまま英語名に・・・】
カケスは屋久島より北の日本全国に分布する留鳥で、ここ箱根でも仙石原をはじめ芦ノ湖畔など、森林さえあればほとんどの場所にいます。
その鳴き声は前述のとおり「ジェーッ!! ジェーッ!!」ときこえるしわがれ声。この声がそのまま「Jay(ジェイ)」という英語名表記にされているのです。
声も大きければ体も大きい鳥、しかしその姿をごらんください。まるで「ごま塩」のような頭、太いくちばしを突き出した黒い顔に、ギョロッと光る目玉。どこか憎めないユニークな顔つきです。
そして青い羽が見えたら幸運!! カケスは騒がしさ・面白さ・美しさの3つを魅せる鳥なのです。
4月頃から木の高さ10m程の所に巣を作り、5個~6個の卵を産みます。この時期は縄張り意識が強くなるため、とりわけ「ジェイジェイジェイジェイ」と騒がしいでしょう。
【カケスとドングリが森を育てる】
カケスは主に昆虫類を食べますが「カシドリ」の別名があるほど、ドングリも大好物のひとつです。(ドングリはクヌギ・コナラ・ミズナラ・シラカシなど、ブナ科の樹木に実る果実の総称)
コナラのドングリ(2014年10月18日、甲斐駒ヶ岳にて撮影)
このドングリを秋が終わりに近づくと、これから来る厳しい冬に備え、落ち葉の裏などに保存食として貯えておくのです。しかしその隠し場所を忘れてしまったり、運んでいる最中にうっかり落としてしまうこともあるようで・・・。
それでもカケスによって森に散りばめられたドングリは、その場所で芽を出してどんどん育ちながら、やがて緑豊かな樹木となっていくのです。
(カケスの学名に表記されている「glandarius」は「ドングリ」の意味)
余談ですが、箱根旧東海道の畑宿~甘酒茶屋間には「橿木坂(かしのきざか)」があります。江戸時代の旅人を苦しめた難所、こんな歌が記されていました。
(2023年3月7日撮影)
ここもカケスがよく現れる場所です。
【想い出は幼き日のアニメーション】
私がはじめて「カケス」の名を知ったのは、幼少期にみたテレビアニメ「山ねずみロッキーチャック」に登場のキャラクター「かけすのサミー」でした。
小さな帽子をちょこんとかぶり、青い羽の上に白ワイシャツと赤ネクタイ姿。そして何かがおきれば「ニュースだよ! ニュースだよ!」と森を飛びまわる、お調子者の情報屋・・・。
画像引用…dアニメストア「山ねずみロッキーチャック」より、製作…ZUIYO
(ちなみにサミーはアメリカカケスかアオカケスがモデルと思われます)
【カケスのニュースを信じよう!!】
カケスの学名に表記されている「Garrulus」は「おしゃべり」という意味。だからこそカケスは、情報収集能力と情報伝達能力に優れた鳥です。サミーというキャラクターにも納得させられました。
秋が深まる頃、森の中に響く「ジェーッ!! ジェーッ!!」の声は「もうすぐ冬が来るから準備をしてね~!」という、情報屋・カケスのトップニュースなのかもしれません。
【カケスの基本情報】
●和名…カケス(懸巣、鵥)
(別名…カシドリ・橿鳥)
●学名…Garrulus glandarius
●英名…Eurasian jay
●カラス科カケス属
●留鳥
●観察できる時期…ほぼ1年中
●体長…オス・メスとも約33cm
●翼開長…オス・メスとも約50cm
●体色…額から前頭部は白と黒のまだら模様、
後頭部に背中・胸部は葡萄(ぶどう)褐色、
羽は黒・白・青の美しい色模様、
飛ぶと白くて丸い色が見える。
●鳴き声
・地鳴き…ジェーッ! ジェーツ!
・さえずり…なし
・他の鳥の鳴きまねが上手
(チェーンソーの音まねをすることも)