ワレモコウは仙石原の風にさわさわと、誰もが想う秋の訪れとなつかしい郷愁

ワレモコウは、仙石原に秋の訪れを告げる花。どこか淋しげなその姿とワインレッドの色合いが、西に傾いた太陽に輝き、高原の風に吹かれています。

(2022年8月27日、箱根湿生花園にて撮影)

【哀感漂うワインレッドの花】

お盆が終わり、8月中旬を過ぎた箱根。まだまだ残暑は続きつつも、夏景色に覆われていた仙石原には、少しずつ秋の気配が漂いはじめてきます。

高原をさわさわと吹きわたる風に、濃い紅色の草花がゆれていませんか。その花こそワレモコウ。どこか淋しげで哀感を漂わせる姿に、人々は今年も秋の訪れを想います。

(2020年8月25日、箱根湿生花園にて撮影)

【厳しい自然環境にとても強い!】

ワレモコウは日本全国から朝鮮半島~中国~シベリアに分布しています。開花期は8月中旬から10月中旬ですが、早い場所では7月下旬に開花。日当たりのよい開けた草原に見られるでしょう。

初夏には根元から生える根生葉(こんせいよう)と、茎に互生する葉「茎生葉(けいせいよう)」が姿を現します。葉は細長い楕円形で光沢があり、縁には細かい鋸歯が目立ちます。

そして細かく枝分かれした1mほどの茎先に、暗紅色の穂状花序をいっぱい付けます。花は花弁のない独特の姿で、萼(がく)と4本の雄しべがあります。

ワレモコウの葉(2023年8月31日、箱根湿生花園にて撮影)

ワレモコウの穂状花序(2014年9月16日、仙石原にて撮影)

暗紅色が何とも言えない風情を漂わせますが、秋の深まりと共に黒くしおれていきます。ただ暑さ寒さには大変強く、ここ仙石原の厳しい自然環境にも根を張っているのです。

箱根では仙石原の広い範囲や芦ノ湖畔、鷹巣山などで出会えるでしょう。

ちなみに箱根湿生花園では、初夏~夏に開花するナガボノシロワレモコウに、夏の終わりに開花するナガボノアカワレモコウも見られます。

ナガボノシロワレモコウ(2020年8月2日、箱根湿生花園にて撮影)

ナガボノアカワレモコウ(2023年8月31日、箱根湿生花園にて撮影)

【その名称にはさまざまな由来が】

ワレモコウの名称には、数多くの由来があります。

中国の皇帝がその姿と香りを気に入り「吾も請う(我もこの花がほしい)」と口にした説や、キク科植物のモッコウに似た香りがすることから「吾木香(わが国の木香)」という説。

さらには日本の家紋の一つ木瓜紋(もっこうもん)を割ったように見える」説。そして紅葉彩る秋の中「吾亦紅(私もまた紅い)」と、花自身が発したという説があります。

(2014年9月30日、箱根湿生花園にて撮影)

【故郷を想い、新たな旅立ちへ…】

ワレモコウはどこか淋しげな姿。小さなワインレッドの花々は、今年も秋が来たのか・・・と想わせてくれるでしょう。とりわけ夕日に輝く姿には、忘れかけていた郷愁がよみがえってきます。

個人的な話で恐縮ですが15年前のこと・・・私の母が命の期限を告げられた日。そして昨年、私が仙石原から御殿場へ移る話が動き出した日。いずれもワレモコウが咲いていました。

花言葉が示すようにワレモコウは亡き人を愛慕し、新たな変化へ後押ししてくれる花なのかもしれません。仙石原は今年も、ワレモコウが初秋の風にゆれています。

(2015年9月12日、仙石原にて撮影)

【ワレモコウの基本情報】

●和名…ワレモコウ(吾亦紅、吾木香など)
●学名…Sanguisorba officinalis
●英名…Great burnet
●バラ科ワレモコウ属
●多年草
●開花期…8月下旬~10月中旬
●花…長さ約1.0cm~3.0cm、直径約0.5cm~1.0cm
(暗紅色のワインレッドをした穂状花序
●葉…根生葉茎生葉があり長さ約5.0cm。
(茎生葉は互生する)
●茎の高さは約50cm~1.0m
●花言葉…「愛慕」「もの思い」「変化」など

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