マツムシソウは初秋の風にゆれて…青紫色は仙石原の大切な想い出

マツムシソウはいっぱい固まって咲く青紫の花。仙石原に箱根の山にその姿が見られれば、暑く長かった夏はやがて終わり、さわやかな秋風が吹きはじめます。

(2015年8月24日、箱根湿生花園にて撮影)

【夏の終わりを、秋の訪れを告げる花】

お盆が過ぎた箱根はツクツクボウシの声と共に、まだまだ厳しい残暑が続きます。でも夏を謳歌していたヤマユリシシウドは咲き終わり、吹く風に少しずつ秋の気配が感じられるでしょう。

そんな8月下旬・・・明るく開けた山肌に、青紫色をした花が群れて咲いていませんか。これが仙石原に夏の終わりと秋の訪れを告げる花、マツムシソウです。

(2014年9月18日、仙石原にて撮影)

【秋の虫たちが鳴きはじめる頃に・・・】

マツムシソウは日本の固有種で、ほぼ全国の明るく開けた草原などに生育します。

開花期は8月下旬から11月上旬。ほっそりと背の高い茎をいっぱいに出し、まるでブローチのような花頭状花序)を数多く咲かせるでしょう。

マツムシスズムシ)が鳴く頃に開花することが名称の由来とされていますが、暑く長かった夏が終わり、吹く風に少しずつ秋を感じる頃・・・その名もうなずける花ですね。

箱根では仙石原をはじめ金時山湖尻峠付近など、日当たりのいい草原や山肌に見られますが、近年は減少傾向にあり、レッドリストに指定されはじめているのです。

(2010年10月18日、金時山にて撮影)

マツムシソウの花は前述のように、多くの花が集まって形成された「頭状花序」。中心部は円筒形をしており、先端が4つ~5つに分裂しています。

周囲には3つに分裂した花弁が目立つでしょう。花にはチョウやアブなど、昆虫が集まってきます。
花が終われば緑色の丸い果実ができ、やがて茶色くあせていきます。

蜜を吸うイチモンジセセリ(2014年8月26日、箱根湿生花園にて撮影)

蜜を吸うハナアブと緑色の果実(2015年8月24日、箱根湿生花園にて撮影)

【厳しい冬を越え、再び咲かせる花】

マツムシソウはいわゆる多年草なのですが、実は「越年草」というもう一つの顔を持っています。

マツムシソウの葉には地面から生える「根生葉(こんせいよう)」と、茎から生える「茎生葉(けいせいよう)」があります。

1年目は根生葉のみで冬を越し、2年目に茎生葉が伸びて花を咲かせ、その使命を終えていくのです。(ただし高地では枯れないものもあります)

(2015年11月6日、湖尻峠付近にて撮影)

【マツムシソウ、しかし花言葉は・・・】

マツムシソウは青紫色の花が秋風にゆれる、とても風情豊かな姿を見せてくれます。しかしその花言葉は・・・「喪失」「失恋の痛手」「叶わぬ恋」など、悲しげな言葉がほとんどです。

園芸品種に「スカビオサ」と呼ばれるセイヨウマツムシソウがあり、家庭で育てるには問題はないのですが、プレゼントとしては避けられた方がいいかもしれませんね。

(2014年9月18日、仙石原にて撮影)

【贈ることはできなくても…心に残る花】

マツムシソウは確かに花言葉から「プレゼントに向かない花」かもしれません。でも初秋の風にゆれるその姿は、本当に心打たれる可憐な姿です。

寒風の中で厳しい冬を越し、再び大きく育って花を咲かせ、輝きながら使命を終えるマツムシソウ。その根底には、次のマツムシソウへ引き継ぐ思いがあるに違いありません。

もしも恋人同士で秋の仙石原を訪れたみなさま、マツムシソウは魅力ある花です。どうかマツムシソウを嫌がらず、想い出の花として咲かせてくださいね。

(2014年10月2日、箱根湿生花園にて撮影)

【マツムシソウの基本情報】

●和名…マツムシソウ(松虫草)
●学名…Scabiosa japonica Miq.
●英名…Scabiosa
●マツムシソウ科またはスイカズラ科マツムシソウ属
●多年草・越年草
●開花期…8月下旬~11月上旬
●花…直径約4cm前後
(青紫色の頭状花序、中心部は円筒形、周囲に3分裂の花弁)
●葉…1枚の長さ約3cm~5cmで対生。細かな羽状深裂
しており、上部は披針形
(1年目は根生葉のみ、2年目に茎生葉が発生)
●茎の高さは約60cm~90cm
●花言葉…「喪失」「失恋の痛手」「叶わぬ恋」など
  反面で「魅力」「感情」など

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