リンドウは仙石原に青紫を輝かせて…どこまでもあなたを愛す秋の主役
リンドウは陽光いっぱいの秋晴れの日に、ひときわあざやかさを輝かせる青紫の花。色とりどりの紅葉に負けない存在感を見せる、仙石原の秋の主役です。
この記事の目次
【日々深まりゆく秋の風物詩】
箱根最高峰・神山から少しずつ降りてくる紅葉前線。紅に黄に橙・・・さまざまな色が仙石原を彩ります。朝晩の気温もぐんと下がりはじめる晩秋、あちこちに青紫色の花々が迎えてくれるでしょう。
この花々こそ、秋の花の代表格と言えるリンドウ。登山道や歩道のみならず車道や人家の庭にも咲き誇り、仙石原の短い秋の日々を謳歌しているかのようです。
リンドウは東北地方~九州地方にかけて分布し、やや湿り気を含む明るい草原や山肌に見られます。
開花期は9月下旬から11月下旬。高さ約1m近くになる茎の上部に太い蕾を付け、日差しいっぱいな晴天の日に、鐘形をした青紫色の花を数多く咲かせるでしょう。
同じく青紫色のマツムシソウと並ぶ、まさに秋の花の代表格。しかも山々を彩る紅葉の中に見られるとあって、清楚ながらも強い存在感を放っています。
箱根では仙石原をはじめ金時山や湖尻峠付近に芦ノ湖畔など、多くの場所でお目にかかれるでしょう。色深い青紫の花に出会えれば、それだけで秋を満喫した気分になれます。
【良薬は口に苦し…有名な竜胆】
リンドウは味わい深い青紫色に加え、生薬としての顔も持ち合わせています。
とりわけ中国伝来の「竜胆(りゅうたん)」は有名でしょう。晩秋頃に根茎を掘り出し、茎を切除して水洗いした後、天日に乾燥させます。
その強烈な苦味は胃の不調に優れた効果を示し、「胃病み草(イヤミグサ)」の別名もあるほど。今も薬局や専門店で、漢方薬として取り扱われています。
【季節を超え全国に咲く仲間たち】
リンドウ(リンドウ科)は園芸品種も実に多く、世界中に約400種類あるとされています。
変種では葉がリンドウより細いホソバリンドウ、草丈が小さいキリシマリンドウ。近縁種では主に北日本に分布し、青色がさらに濃いエゾリンドウや、やや小型のエゾオヤマリンドウ。
日本海側に多く見られる高山植物のタテヤマリンドウや、箱根では春~初夏に金時山などで見られ、やはり晴天の日に開花するフデリンドウ。
エゾリンドウ(2022年9月4日、箱根湿生花園にて撮影) エゾオヤマリンドウ(2018年9月13日、月山にて撮影)
フデリンドウ(2019年5月5日、金時山にて撮影) コケリンドウ(2016年4月12日、湖尻付近にて撮影)
この他にも箱根湿生花園で3月頃に咲くハルリンドウ。初夏の金時山や長尾山など、日当たりのよい場所に固まって咲くコケリンドウ。
さらには、夏の終わりに風の強い高山に咲くトウヤクリンドウや、薄暗い林内に開花し赤い実を付けるツルリンドウ等々・・・。
姿も色も咲く時期もバラエティに富みつつ、全国各地に仲間の輪を広げています。
トウヤクリンドウ(2017年9月5日、木曽駒ヶ岳にて撮影) ツルリンドウ(2010年9月21日、芦ノ湖西岸にて撮影)
【あなたを愛する正義の味方!?】
リンドウには多くの仲間がいることはもちろん、多くの花言葉を持つことも特徴でしょう。・・・「勝利」「正義感」「満ちた自信」「誠実」などなど・・・。
効果高く優れた薬効を示すリンドウは、人々の心身を害する病魔をはじめ、あらゆる物事に「自信を持ってまっすぐに打ち勝つ、正義の味方」なのでしょう。
逆に「悲しんでいるあなたを愛する」という言葉もあります。どんなに深い悲しみも憂いも、リンドウの花は癒してくれるのかもしれませんね。
【耐えてきたからこそ美しく!!】
リンドウはその青紫色で、人々に清々しさを与えます。しかしその育つ環境は、太陽と風雨にさらされる厳しい自然環境。仙石原や金時山はまさにリンドウが、耐え忍びながら育つ場所でしょう。
だからこそリンドウの花は美しい!! 仙石原を訪れるみなさま。今年も四季の試練を越えてきた青紫のリンドウが、深く味わい深く迎えてくれますよ。
【リンドウの基本情報】
●和名…リンドウ(竜胆)
(別名…イヤミグサなど)
●学名…Gentiana scabra Bunge var.buergeri(Miq.)Maxim.
●英名…Japanese gentian
●リンドウ科リンドウ属
●多年草
●開花期…9月下旬~11月下旬
●花…長さ約4cm~5cmの筒状鐘形で、晴天の日のみ開花。
(青や紫、白など色は多彩)
●葉…長さ約3cm~8cmの卵状皮披針形で対生。3本の葉脈がめだつ。
●茎の高さは約20cm~100cm
●花言葉…「勝利」「正義感」「満ちた自信」「誠実」など
(または「悲しんでいるあなたを愛する」など)