長尾峠は箱根の火山活動を物語る所、各国要人も感動感激した絶景が!
長尾峠(ながおとうげ)は、箱根の西北西に位置する峠です。まずは仙石原の空をごらんください。
右から順に金時山、長尾山、そして鉄塔の立つ丸岳が並んでいるでしょう。その丸岳から左へ尾根を下った所が長尾峠です。
箱根湿生花園からの眺め。中央奥が長尾峠、右に丸岳(2021年5月4日撮影)
この記事の目次
【箱根の歴史を静かに物語る】
約40万年前から大規模な火山活動を続けてきた箱根。長尾峠はこの西にあり、金時山や丸岳などと共に古期外輪山を形成しています。
金時山から近い乙女峠に比べ、訪れる人は少ないですが、箱根火山の自然と歴史を物語る峠です。
芦ノ湖からの眺め。左端が長尾峠、右に丸岳(2018年1月2日撮影)
【❝長尾峠❞は複数箇所にあり】
長尾峠は古期外輪山上に存在しますが、同じ呼称の場所が他にもあります。
峠の下を貫く「長尾トンネル」と、そこから少し上った箱根スカイライン入口の長尾峠駐車場の計3ヶ所。同駐車場は古期外輪山への登山口となっています。
ちなみに「乙女峠」も、箱根外輪山上と国道138号の2ヶ所にあります。
【かつては交通の要所だった】
現在は国道138号が開通し、乙女峠が箱根町仙石原(神奈川県)と御殿場市(静岡県)を結ぶ交通の要所となりました。
しかし国道開通以前はここ長尾峠が、仙石原と御殿場を結ぶ要所だったのです。
仙石原から国道138号を御殿場方面へ進むと、左へ神奈川県道736号が分岐しています。これを上って行くと長尾トンネル。
ここを抜ければ静岡県道401号となって下り、最後は国道138号に合流し御殿場市へ至ります。これがかつての箱根裏街道。
国道138号がメジャーとなった今、この道路を利用する人は少なくなりました。
【富士山の眺めが素晴らしい】
でも長尾峠からは、雄大な富士山が望めます。広い駐車スペースがあり、思う存分に眺めを楽しめるでしょう。
ここからは展望抜群な箱根スカイラインが、外輪山上を南北に走っています。
緑豊かな県道をゆっくり峠へ向かい、絶景爽快なドライブが楽しめる…その起終点こそ長尾峠です。
【箱根火山活動を物語る痕跡】
ここ長尾峠から丸岳にかけての山腹には、箱根の火山活動を物語る場所があります。
神奈川県道736号沿いに見られる「長尾峠の露頭」。露頭(ろとう)とは地層を観察できる場所の意味です。
約40万年前に始まったとされる箱根の火山活動。その初期には富士山のような形をした「成層火山」が至る所で噴火をしていました。
仙石原にもこの成層火山があり、激しい活動によって残された岩石や土砂が、地層となって現れているのです。ここは「箱根ジオパーク 箱根早川沿い」の一つに指定されています。
【主な登山コースを紹介!】
(1)長尾峠駐車場 コース
仙石原から長尾峠へ歩いて登るには、かなりの距離と時間を要します。
マイカーをお持ちであれば国道138号を御殿場方面へ進み、途中で左の神奈川県道736号に入り、約10分で長尾トンネルを通過。
国道138号から左へ(2021年4月26日撮影) 神奈川県道736号(2021年4月26日撮影)
駐車場から登山道入口(2021年4月26日撮影) 長尾峠に到着(2017年5月2日撮影)
左折して上ると箱根スカイラインの入口があり、手前を左に入れば長尾峠の駐車場です。ここから古期外輪山への登山道が出ており、長尾峠までは約15分。
ただしハコネダケに覆われ、展望はありません。片道約40分で丸岳を往復するのもいいでしょう。
(2)仙石原~金時山~丸岳 経由コース
時間と体力に余裕があれば、仙石原から金時山に登り、長尾山~乙女峠~丸岳~長尾峠と縦走した後、やや急な道を耕牧舎跡へ下山。
ここから仙石原自然探勝歩道を通って、仙石原中心部へ帰る方法もあります。(所要時間は約6時間~6時間30分)
長尾トンネル前から神山・大涌谷と仙石原(2022年7月6日撮影)
長尾峠から耕牧舎跡への下り(2010年5月3日撮影) 約30分で耕牧舎跡(2018年4月29日撮影)
【長尾峠に来てよかった!!】
かつて長尾峠には多くの人々が足を運びました。昭和天皇もこの素晴らしい眺めに、感嘆の声を上げられたとききます。
最後に1922(大正11)年4月26日、長尾峠に足を運ばれた、英国皇太子「プリンス・オブ・ウェールズ」の言葉で締めくくりましょう。
This alone is worth comming all the way to Japan to see
「これだけで遠く日本に来た意味がある」
大涌谷から望む長尾峠、背後は富士山(2017年4月30日撮影)
【長尾峠の基本情報】
●標高911m
●古期外輪山
●富士箱根伊豆国立公園
●神奈川県足柄下郡箱根町、静岡県御殿場市、
●箱根スカイラインの出入口
●御殿場市富士見十二峠の一つ。