ヤマボウシは箱根に夏を告げる、かの有名人が世に紹介した名花!

ヤマボウシは箱根の深緑に、ぴったりとマッチする花。梅雨空からときどき降りそそぐ日差しに、淡い白色・クリーム色が無数の輝きを見せます。

(2016年6月15日、仙石原にて撮影)

【箱根の深緑のあちこちに…】

爽やかな五月晴れの空が、やがて梅雨空に変わろうとする5月下旬。箱根町内のあちこちを、ピンク色のサンショウバラが彩りはじめます。

時を同じくして周囲の山々をごらんください。緑が色濃くなった山肌のあちこちに、いっぱいの白色が散りばめられているでしょう。これがヤマボウシです。

ここ仙石原でも箱根湿生花園をはじめ、長安寺公時神社の境内、金時山などで見られます。この季節は町内のいたる所から、近くに遠くにヤマボウシを確認できます。

(2013年6月15日、仙石原にて撮影)

【ヤマボウシは初夏の代表格】

ヤマボウシは東北地方南部から南西諸島方面にかけて分布する落葉高木。5月下旬から7月中旬にかけ、高さ約5m~10mの樹木に小さい花と、白く目立つ「総苞片(そうほうへん)」を多数付けます。

特にここ箱根は「日本一の名所」と呼ばれるほど、多くのヤマボウシが山肌に咲き広がり、まさに初夏の風物詩と言える光景。

やや湿り気の多い林縁部を好むため、仙石原はぴったりの環境でしょう。

(2016年6月10日、芦ノ湖東岸にて撮影)

【花に見えるけど花ではない】

少し前述しましたが、ヤマボウシの白く目立つ部分。実はこの部分は花ではなく、花の基部を包む「総苞片(そうほうへん)」と呼ばれています。

では花はどこにあるのかと言えば、総苞片に囲まれた真ん中に、ポツンと見える緑色の円い部分私たちが4枚の白い花びらだと思っていたのは、花ではなく「総苞片」だったのです。

この真ん中にある花(花序)を「お坊さまの頭」に例え、白い総苞片を頭巾のように被っている様が「山法師(やまぼうし)」という名の由来となりました。

ちなみに法師とは「僧兵(そうへい)」を意味します。

(2009年6月19日、湖尻付近にて撮影)

御殿場市などでは近縁種の「ハナミズキ」(別名・アメリカヤマボウシ)が街路樹によく見られます。「花みずき通り」という道路もあるほど、初夏の街中を爽やかに彩ってくれるのです。

【秋になれば赤く熟した実が】

円いポツンとした花は、咲き終わるとやがて結実します。最初は黄緑色ですが、秋が深まるにつれ、だんだん赤く熟してくるでしょう。

果実は甘味があり食用にされる他、果実酒にも利用されますが、大きな種が入っているのでご注意を。

(2014年9月18日、湖尻付近にて撮影)                 (2020年9月24日、熱海市日金山にて撮影)
 
(注意・・・近縁種のハナミズキは有毒です)

【ヤマボウシは箱根の方言?】

箱根の初夏はヤマボウシがいっぱいに彩ります。その光景から箱根は「ヤマボウシの日本一の名所」とまで呼ばれました。

かつて箱根ではヤマボウシを「クサ」と呼んでいたことがあります。

この「クサ」が「kousa」という種小名となり、ヤマボウシの学名・英名に使用されているのです。

(2018年6月9日、仙石原にて撮影)

【歴史上有名人が西洋に紹介】

ヤマボウシは西洋にもその名を広められました。江戸時代後期に来日した医師、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトがその人。彼はここ箱根にも足を運び、多彩な自然へ深い関心を示します。

そして多くの植物を採集し、標本を持ち帰りました。その一つがヤマボウシで、あの「kousa」が学名に取り入れられたのです。シーボルトは箱根の個性をヤマボウシにこめたのかもしれません。

尚、シーボルトのヤマボウシ紹介には、イギリスの植物学者ジョージ・ベンサムが関わっており「Benthamidia japonica」の学名もあります。

(2015年6月11日、箱根湿生花園にて撮影)

【ヤマボウシとやまぼうし】

私は1996(平成8)年3月から2012(平成24)年3月までの16年間、芦ノ湖北側の高台に建つ箱根ビジターセンターに勤務していました。

スタッフと箱根パークボランティアのみなさんが、箱根の自然を人々に伝えようと、情報収集・発信活動を行っています。

箱根ビジターセンター(2019年2月8日撮影)

このパークボランティアのみなさんが以前、「やまぼうし」という月刊機関紙を発行していました。箱根の自然情報はもちろん、さまざまなエピソードも紹介され、情報交換の場となっていたのです。

みなさんの帽子に付けられたワッペンもヤマボウシの花がデザインされており、まさに活動の象徴となって、現在も受け継がれています。

…あれから長い年月が経ちました。みなさま、お元気ですか。私は元気にしております。お陰で私は初めて「ヤマボウシ」を知ることができました。

(2008年6月25日、箱根ビジターセンター付近にて撮影)

【ヤマボウシの基本情報】

●和名…ヤマボウシ(山法師)
●学名…Cornus kousa / Benthamidia japonica
●英名…Kousa dogwood / Japanese dogwood
●ミズキ科ミズキ属
●落葉高木
●樹高…約 5m~10m
●総苞片は長さ約5cmの4弁
●葉…対生で卵形楕円形
●開花期…5月下旬~7月中旬
●箱根では「クサ」と呼ばれていた
●花言葉…「友情」

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ヤマボウシは箱根に夏を告げる、かの有名人が世に紹介した名花!” に対して1件のコメントがあります。

  1. 尾上 より:

    ヤマボウシがクサKousa とは!知らなかった。

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