タチツボスミレは淡い紫色を広げる花、仙石原から箱根全山でわが春を謳う!

タチツボスミレは春の盛りを彩る淡い紫色。サクラが咲き終わった仙石原はもちろん、箱根全山の森蔭や山肌に、いっぱいいっぱい咲き広がります。

(2017年4月20日、芦ノ湖東岸歩道にて撮影)

【日本を代表するほど多いスミレ】

箱根の春は、さまざまな花々が色を競います。サクラのピンク、スイセンの黄色、コブシの白・・・そして忘れてはならないのが、青・紫・白・ピンクなど、多彩な色を咲かせるスミレたちです。

その代表格と言えるのが、まさにタチツボスミレ。日本に約200種類以上とされるスミレ類の中で、最も多く見られる花でしょう。

(2015年4月21日、芦ノ湖東岸歩道にて撮影)

タチツボスミレは日本全国に分布しており、開花期は3月下旬から5月中旬。

5枚の花弁の淡い紫色と中心部の白色、真ん中に見える雌しべのオレンジ色が、何とも美しく印象的でしょう。花の後ろにある「距(きょ)」も紫色です。

距の部分(2023年4月4日、金時山にて撮影)

箱根では日なた・日陰を問わず全山にわたって見られ、ここ仙石原でも車道沿いの石垣から、仙石原自然探勝歩道や登山道に至るまで、ごくふつうに出会えるスミレです。

葉は丸みを帯びたハート形で、縁には鋸歯状のギザギザが。この葉もタチツボスミレの特徴でしょう。花が終わると葉の間から茎が伸び、高さ約20cmほどになります。

花と葉(2018年4月19日、芦ノ湖東岸歩道にて撮影)

【仲間がたくさんのタチツボスミレ】

タチツボスミレは日本各地で見られるスミレ。とりわけ関東地方から中部地方では海岸部から、標高1,700m~2,500mの亜高山帯まで、あらゆる環境に広く分布しています。

(2023年4月4日、金時山にて撮影)

そして数種類の変異や近縁種があるのも特徴でしょう。変異と呼ばれるものでは西日本に多いコタチツボスミレや、日本海側で見られるツルタチツボスミレに、伊豆諸島に咲くシチトウスミレなど。

また近縁種では北海道に咲くアイヌタチツボスミレや、西日本に見られるナガバノタチツボスミレ。さらには茎の高さが40cmにもなるオオタチツボスミレに、箱根でも見られるニオイタチツボスミレなどがあります。

どれもよく似通っているため、見分けるのはなかなか難しそうです。

ニオイタチツボスミレ(2015年4月24日、浅間山にて撮影)         オトメスミレ(2022年5月5日、金時山にて撮影)
 

タチツボスミレは金時山から丸岳にかけての山では、これも近縁種で白く可憐なオトメスミレといっしょに咲いている光景が見られるでしょう。

ちなみにオトメスミレによく似たシロバナタチツボスミレがありますが、距の部分が白いことがオトメスミレとの違いで、数はさほど多くはありません。

タチツボスミレには日本全国にたくさんの仲間・親類がいるのです。

【切手のデザインに採用された花】

タチツボスミレはかつて、切手のデザインになったことがあります。1994(平成6)年4月25日発売の430円普通切手に、色あざやかに披露されました。

発売時期もちょうどタチツボスミレが盛りを迎える頃。まさに日本を代表するスミレなのです。

(写真引用…スタマガネットONLINE SHOP 1994年シリーズ タチツボスミレ430円より)

【仙石原にも御殿場にも咲いていた】

私は2006(平成18)年10月から16年間、ここ箱根町仙石原に住んでいました。よく仙石原諏訪神社長安寺へ散歩に出かけましたが、春になれば最初に出会った花こそタチツボスミレ。

車道沿いの石垣に、ツクシといっしょに咲いていたこともあります。

そして御殿場に生活拠点を移し、先日散歩に出かけたらタチツボスミレに出会いました。仙石原を離れ半年近い春の日、何か心からほっとした想いになったものです。

花言葉のようにタチツボスミレは、ささやかながらも温かな幸せをくれる花なのです。

(2019年4月23日、芦ノ湖東岸歩道にて撮影)

【タチツボスミレの基本情報】

●和名…タチツボスミレ(立坪菫)
●学名…Viola grypoceras A.Gray
●英名…なし
●スミレ科スミレ属
●多年草
●開花期…3月下旬~5月中旬
(淡紫色の五弁花にオレンジ色の雌しべ)
●葉…長さ約2cm弱のハート形
●茎の高さは約20cm
●花言葉…「小さな幸せ」「つつましい幸福」

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タチツボスミレは淡い紫色を広げる花、仙石原から箱根全山でわが春を謳う!” に対して2件のコメントがあります。

  1. 髙橋由美子 より:

    タチツボスミレには、こんなに近縁種があるんですね。加藤さんのブログとても詳しくて、素晴らしいです。
    牧野富太郎さんと同じ時代に生きていたら、一緒に研究できましたね☆

    1. 加藤 学 より:

      高橋さん、ありがとうございました。返信が遅くなり申し訳ございません。・・・牧野富太郎さんは、陽希さんが登ったあの利尻岳で花を探すのに夢中になる余り、あやうく遭難しそうになった事があるそうです。牧野さんにとってはどんな小さな花も「らんまん」に見えたんでしょうね。・・・写真集を必ず作成出版します。

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