エイザンスミレは山奥に湖畔に満開、ピンク色の花が薄暗い森を照らす
エイザンスミレはほんのりと淡いピンク色の花。鬱蒼とした森のそばで風に吹かれながら、小さく大きくいっぱいに春を謳います。
【深い緑にほんのり輝きを放つ】
咲き誇っていたサクラがそろそろ終わりを迎えると、いよいよ色とりどりのスミレたちが「我が世の春」とばかりに咲き乱れます。
この多彩なスミレたちの中に、他のスミレとは少し趣の異なる花々があるでしょう。淡いピンク色を大きく輝かせる・・・それがエイザンスミレです。
エイザンスミレは北海道を除き、青森県~九州の太平洋側に分布しています。やや奥深い山の林縁部に見られ、湿り気の多い環境を好むことが特徴。
和名は滋賀県・京都府境の比叡山に多く生息することが由来です。
ここ箱根や仙石原では、仙石原自然探勝歩道や金時山~丸岳に多く、特に乙女峠~金時山の登山道では4月下旬によく見られるでしょう。
また芦ノ湖東岸歩道でも4月中旬、いっぱい群生して咲く光景が見られます。ヒノキ林などの薄暗い所を歩けば、きっとお目にかかれる花です。
【薄暗い森でそっと静かに大きく】
エイザンスミレは4月中旬~5月中旬にかけ、直径約2cm~2.5cmと他のスミレでは見られない大きめの花を咲かせ、「距(きょ)」も長さ約7mmと大型。
花の色はほんのりとしたピンク色ですが、白色もあったりと変化に富みます。花が大きくピンク色・白色であるが故に、薄暗い森の中ではひときわ目を引くでしょう。
2輪ほどで咲くこともあれば、いっぱいに群れて咲くこともあります。
白花のエイザンスミレ(2015年4月27日、駒ヶ岳にて撮影)
【他のスミレにはない大きな葉】
葉の形も特徴的で長さ約3cm~5cm、3つの深い鋸歯状の切れ込みがあります。そしてこれが1つの基部から、あたかも「鳥の足」のような形で5分裂するというもの。
他のスミレに一般的なハート形や丸形とは、明らかに異なる大型で個性的な葉。しかも花が終わり夏になると、直径25cmほどにまで成長するのです。
【11月にも咲いていた個性的な花】
10年ほど前だったでしょうか。11月の金時山に登った時、何と一輪のエイザンスミレが咲いていました。紅葉が盛りを迎えた箱根に、ひょっこりと開花していたのです。
また前述の芦ノ湖東岸歩道では4月中旬、エイザンスミレの大群落を目撃したことがあります。
タチツボスミレやオトメスミレのように数多くありませんが、花も葉も個性あふれるエイザンスミレ。その出会いは強く印象に残るでしょう。
【エイザンスミレの基本情報】
●和名…エイザンスミレ(叡山菫)
(別名エゾスミレ、但し北海道には分布しない)
●学名…Viola eizanensis
●英名…なし
●スミレ科スミレ属
●多年草
●開花期…4月中旬~5月中旬
●花…直径約2cm~2.5cmと大型
●葉…長さ約3cm~5cmで深い切れ込みあり
(1つの基部から5分裂するものもある)
●薄暗く湿気の多い環境を好む
●花言葉…「茶目っ気」